スタイリッシュで強烈なゴア表現!ニューウェーブ・フレンチホラー

芸術大国フランス、映画も例にもれず娯楽としてはもちろん文化的、芸術としてフランス国民に親しまれている産業です。しかし、ホラー映画においてはフランス産ホラーはフランス国内で人気がなく、映画として認められていません。

そんなホラー映画不毛の地フランスで、2000年代にニューウェーブ・フレンチホラーがホラーファンの中で話題を呼びました。エンターテイメント性があるアメリカ産ホラーとは一線を画すスタイリッシュで強烈なゴア表現のホラーが特徴的です。

この記事では、
ニューウエーブ・フレンチホラーについて

ニューウェーブ・フレンチホラー4作品について
解説します。
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ニューウェーブフレンチとは

ニューウェーブ・フレンチホラーについて解説する前に、フランスでのホラーの歴史を紹介します。

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フランスホラーの歴史

フランスは、現代においてはホラー不毛の地でありながら、歴史をさかのぼると古い時代ではホラーが親しまれた時代がありました。SFX(特殊撮影)の祖でもあるジョルジュ・メリエス監督は1896年に『悪魔の館』を撮影しています。『悪魔の館』は娯楽ファンタジーとして撮影していますが、ストーリーとキャラクターにより世界最初のホラーとも言われています。(ストーリーのないものでは、これ以前にエジソン社のウィリアム・ハイセ監督の『メアリー女王の処刑』があります)

また、1898年には恐怖残虐劇場「グラン・ギニョール」が人気を博していました。当時の一般的な劇には出ない浮浪者、街頭の孤児、娼婦、殺人嗜好者といった役が多く登場し、妖怪譚、嫉妬からの殺人、嬰児殺し、バラバラ殺人、火あぶり、ギロチンで切断された後も喋る頭部、外国人の恐怖、伝染病などありとあらゆるホラーをテーマとする芝居が多く公演され、血糊などを大量に用いた特殊効果付きの演出もありました。

注釈:この映像は実際のグラン・ギニョールの映像なのか議論の余地があります。しかし、出ている役者は当時グラン・ギニョールにでていた役者といわれています。

70~80年代はフランス初ドラキュラ映画やフランス発スプラッター映画を撮ったジャン・ローラン監督を除くとホラー映画は皆無。

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ニューウェーブ・フレンチホラーの特徴

ホラーの古い歴史がありながら、現代では国内産のホラーが人気がないフランス。そんなホラー不毛の地フランスで、2003年の『ハイテンション』を皮切りに2007年までの短いムーブメントの間に、タフでエクストリーム(極度)なホラーが誕生しました。

ニューウェーブ・フレンチホラーの特徴といえば、エクストリーム(極度)で強烈なゴア表現がよくいわれます。しかし、その他にもアメリカにはない特徴があります。

タフなストーリーのためのエクストリームなゴア表現

ニューウエーブ・フレンチホラーはアメリカの娯楽性のあるホラーとは違い、ストーリーがタフでシリアス。
タフでシリアスなストーリーの素材として強烈なゴア表現を用いている。一部の作品によっては、人種差別問題、貧困問題、移民問題といったダークサイドの社会問題をテーマとしてとられている作品もあります。

スタイリッシュな映像

芸術大国フランスらしく映像がスタイリッシュで美しい。スタイリッシュな映像がストーリーをよりリアルに、映像表現をタフにしてくれます。

ヒロインがアメリカのヒロインよりもタフ

フランスのヒロインは、アメリカのヒロインよりもタフで最初から強さがある。

アメリカのホラー映画ヒロイン、ファイナルガールやスクリームクイーンは冒頭ではか弱く話が進むにつれて徐々にタフになっていき、ラストで限界を突破する。しかし、ニューウエーブ・フレンチホラーのヒロインは最初から知性とタフさを兼ね備えていて、緊急時にスイッチがはいる。そして、話が進むにつれてその力を磨いていく。

フランスの映画はフェミニストで男女平等の観念があり、アメリカのヒロインは被害者で、フランスのヒロインはファイターで男性と平等の立場で描かれている。

想定外のオチが効いている!『ハイテンション』(2003年)

2003年制作
製作国:フランス
上映時間:91分
監督:アレクサンドル・アジャ
サブジャンル:スラッシャー、スプラッター、サイコ
スラッシャー 3.0
スプラッター 4.5
サイコ 2.5
ストーリー 3.5
総評 4.5
あらすじ
親友アレックスの実家で週末を過ごすことになった女子大生マリー。その夜、突然訪問してきた男がアレックスの両親と弟を次々と惨殺していく。さらにトラックでアレックスを連れ去ろうとする。マリーはなんとか彼女を救おうとするのだが……
ニューウェーブ・フレンチホラームーブメントの先駆けとなった傑作『ハイテンション』
血糊の量がハンパなく気持ち位ぐらいのド直球スプラッター、フランス映画らしいスタイリッシュな映像、そして想定外のオチが話題を呼びました。
その想定外のオチは、賛否両論が有りますがこれがなかったらこれほどの話題作にならず、ただのB級スプラッターとして埋もれていた可能性もあったと思います。
ネタバレ雑学!映画を見てない人はクリックしないでね
犯人は、ベリーショートの女性主人公マリー。彼女は2重人格者で襲ってきた男はマリー自身の別人格なんですが、DVDのパッケージで、すでにネタバレしています。

マリーの背景にある彼女の影を見るとあの男の影なっています。
にくい遊び心がありますね。

このラストを見ると色々と辻褄が合わないところが有りますが、そもそもこの映画の視点は精神異常者のマリーから見た視点であるため、「信頼できない語り手」であり、辻褄が合わないことはストーリー上問題がないことになります。

ラストのオチは、出資を受けたヨーロッパ・コープから変更する指示があったそうです。元々のオチはどんなストーリーだったんでしょうね。

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最もおぞましいゴアストーリー『屋敷女』(2007年)

2007年制作
製作国:フランス
上映時間:1時間25分
監督:ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ
サブジャンル:スラッシャー、スプラッター、サイコ
スラッシャー 3.5
スプラッター 4.5
サイコ 3.5
ストーリー 2.0
総評 4.0
あらすじ
出産目前の妊婦サラの家を不審な女が訪れた。女が窓から押し入ろうとしたため警察を呼ぶと、女は姿を消す。ひと安心して床に就くサラだったが、なんと女はすでに家の中に侵入しており……。
最高のエクストリーム(過激な)ホラーとして考えられた衝撃のラスト。
妊婦さんや赤ちゃんを授かったばかりの女性には、オススメできないと話題になった作品です。
『ベティ・ブルー』のヒロインだったベアトリス・ダルが殺人鬼役を怪演。
女性の殺人鬼ながらとてもパワフルで恐ろしい役に見事にハマっています。プライベートでも麻薬、障害事件、窃盗事件と破天荒な人生の女優さんなので、それほど無理なく演じることができたのではないでしょうか。
ストーリーはとてもシンプルなスリラーものですが、とにかくゴアすごく血糊の量もハンパなく多い。そして、痛い。ハサミのような日常で使う刃物を凶器で使われていると、観ている側も想像しやすい分痛さが否応なく伝わってきます。
問題のラストは、あまりにも非人道的でレンタルDVDでは黒いモザイクがかけられる程。アンレイテッド版ではモザイク無しで観ることができます。
2016年にはハリウッドで『インサイト』としてリメイク。ハリウッド版はスプラッターを抑えた大衆向けスリラーになっています。

実はフランスの移民問題を背景に描いたホラー『フロンティア』(2007年)

2007年制作
製作国:フランス
上映時間:1時間48分
監督:ザビエ・ジャン
サブジャンル:スリラー、トーチャポルノ、スプラッタ
スリラー 4.0
トーチャポルノ 2.5
スプラッタ 2.0
ストーリー 3.5
総評 3.0

あらすじ
仲間と強盗を計画するが失敗に終わったヤスミンは、恋人のアレックスと仲間と落ち合う予定の国境近くの小さな宿へ向かう。しかし、そこには変わり果てた仲間の姿が。ヤスミンは、恐ろしい宿から脱出しようとするが……。
スプラッター、トーチャポルノ(拷問)をフランスらしくスタイリッシュにした『フロンティア』
筋書きが『悪魔のいけにえ』に似ていることから、フランス版『悪魔のいけにえ』と評されることが多く見られます。たしかに、監督のザビエ・ジャンはインタビューで自身が好きな70・80年代のホラー映画を詰め込んだと話しているので筋書きは『悪魔のいけにえ』が反映されているのでしょう。

Horror New Frontier ザビエ・ジャン監督インタビュー(英語)

この側面だけ見ると『悪魔のいけにえ』+『ホステル』の劣化版といった低評価をしてしまいます。しかし、『フロンティア』は「移民問題」や「レイシズム問題」といったフランスで起こっていた人種問題をテーマにホラー映画として撮影されました。

序盤の暴動のシーンは、2005年パリ郊外暴動事件を描いています。また、2002年の大統領選挙の「ルペンショック」、ドキュメンタリー映画『スカーフ論争~隠れたレイシズム』で見られるような「レイシズム問題」といったフランスが抱えている問題をこの映画の背景として描いているのではないでしょうか。

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疑いなさい!『マーターズ』(2007年)

2007年制作
製作国:フランス
上映時間:1時間40分
監督:パスカル・ロジェ
サブジャンル:スラッシャー、スリラー、拷問、モダン・ホラー
スラッシャー 3.5
スリラー 4.5
拷問 5.0
モダン・ホラー 5.0
総評 5.0

ニューウェーブ・フレンチホラー4作品の中で一番、映像的にも精神的にしんどいトラウマレベルの作品。先が読めない展開、クリーチャーの出現、トラウマ級の拷問と完成度の高いホラーです。ただ、表現が過酷過ぎる事とストーリーに謎が多すぎるため、最高と最低の両極端な評価が見られます。

低評価の意見に多いのは『ホステル』と同列視する”トーチャポルノ(拷問ポルノ)”と評して見下す意見が多く見られます。しかし、監督自身は”トーチャポルノ”として拷問シーンを撮っておらず、この映画のテーマに必要なシーンとして撮影をしています。

ネタバレ考察、見ていない人はクリックしないでね
この映画の隠れた本当のテーマは、観客への現代西洋経済社会の不都合な真実に目を向けてほしいというメッセージです。

監督パスカル・ロジェは『マーターズ』についてのインタビューで次のように語っています。(グーグル翻訳による訳です)
マーターズ:パスカル・ロジェへのインタビュー(英語)

「私たちの時代はそれほど栄光ではありません。ユートピアはなく、イデオロギーは崩壊し、将来への私たちの信仰は崩壊しました。これを言うのはあまり独創的ではないと思いますが、西洋の世界は病気だと本当に信じています。個人の不安は最高で、誰もが常に低レベルの恐怖の中で生きています。私たちが壁にぶつかりそうな気がします。……それはずっと前に悪が勝利した世界であり、良心はお金の支配下で消滅し、人々はお互いを傷つけることに時間を費やしています。もちろん、それは比喩ですが、この映画は、私たちが今日経験していることからそれほど遠くないことを説明しています。」

また、次のようにも語っています。

「私にとって、殉教者は、苦しむしかないのに、なんとかこの痛みで何かをすることができる人を表しています。もちろん、それは私が今日の世界についてあなたに話していたことの極端な予測であり、完全に魅了されていません。私たちは何も信じていないので、世界は勝者と敗者の間でますます分割されているので、敗者に残されているのは彼らの痛みで何かをすることです。」

このインタビューから推測すると今の世の中は、社会的・経済的強者と弱者が分断されていて、強者の豊かな生活は弱者の痛みによって支えられている。

例えば、先述した『フロンティア』のテーマであるフランスの移民問題。また、アパレル業界のウイグル人権問題チョコレート業界の児童労働問題といった弱者の過酷な環境によって先進国の人々は安く品質の高い商品やサービスを受けることができています。

映画に出てくる謎のカルト集団は、現代西洋経済社会の中での強者であり、ヒロインのリュシーに襲われる幸せそうな家庭も、そのような問題に目を向けずに豊かな生活を受容している先進国の家庭を指していると考えます。

「拷問」することで殉教者を作り出し、死後の世界を知ることを目的としたカルト集団は、「拷問」=「弱者の痛み」することで、「死後の世界」=「理想の世界」または「現在よりも良い社会システム」を望む現代西洋経済社会のシステムにより豊かな生活を受容している強者そのものです。

ヒロインのアンナがマドモアゼルに「死後の世界」を伝え、その直後マドモアゼルが自殺するシーン。
監督が観客に、「今の社会のシステムの闇の部分に目をそむけず、今の世の中を疑いなさい」というメッセージだと考えます。


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